個人開発をしていると、
- 作ったサービスやアプリを使ってもらえない
- 使ってくれるのは無料ユーザーのみでマネタイズできない
- 「課金しても使いたい」と思ってもらえるサービスを作れない
といった問題に直面します。
これは「お金を払ってでも使いたい」というユーザーの深い課題(ペイン、ニーズ)を見つけられていないことが原因です。
この問題の解決策として、サービスやアプリを開発する前に、想定ユーザーの話を聞いてユーザーの抱えている課題を探す「課題探索インタビュー」という方法があります。
実際にインタビューをしてみると新しい発見が多く、個人開発に役に立ちそうという手応えが得られました。
そこで、この記事では個人開発者である私がどのようにインタビュー相手を探し、どんなことを聞いて、どんな知見を得たのかを共有します。
インタビューの背景と対象者
インタビューをする前に「誰にどんなインタビューをするのか?」を決めておかなくてはいけません。
私の場合は、インタビューを実施する前に、ある営業マンから「顧客関連の情報収集で課題がある」という話を聞いていました。
たとえば「お客さんの人事異動があったらすぐに知りたい・見逃したくない」という要望です。
そこで「指定の企業に関するニュースが出たときに、それをメールで通知してくれるサービス」のMVP(Minimum Viable Product)を作成しました。
それを持って「他の営業マンにも同様のニーズがあるか?」を調査しました。
インタビュー2件目の時点で、そのサービスには強いニーズがなさそうだったので、その他の課題についてもインタビューしました。
インタビュー相手をどう見つける?
最低でも5人にはインタビューしようと決めていました。
しかし、ITエンジニアという職業柄、営業職の知人は多くありません。
それでも大学時代の友人に営業マンが2人いたので、そこからはじめることにしました。
2人へのインタビューでコツをつかみ、会社の同僚の営業マンにもインタビューを実施しました。
ここまでで3人。
知人だけでは足りないので、同僚の営業マンに営業職の知り合いを紹介してもらいました。
ありがたいことに2人の営業マンを紹介してもらえました。
これで5人にインタビューができました。
最低5人へのインタビューを目標にしていましたが、できれば20人くらいインタビューをしたかったため、他に営業マンに出会う方法を探しました。そして異業種交流会に参加しました。1人だけ営業マンが見つかったのでインタビューしました。
インタビュー相手の見つけ方に関する反省点
インタビュー相手を見つけるのが大変だった理由として、営業マンの人脈がないことが挙げられます。
知人はエンジニアばかりです。
はじめて異業種交流会にも参加しましたが、そこでもあまりいい人を見つけられませんでした。マルチ商法などの勧誘をしてくる人もおり、時間を無駄にしました。
今回のインタビュー全体の反省点でもありますが、詳しくない職種・業種で課題を見つけるよりも、もっと身近な領域を対象にしたほうがよさそうです。
また、インタビュー相手の見つけ方としては以下が参考になります。
インタビューで何を聞くか?
それぞれのインタビューは次の手順で実施しました。
- 業務の内容を聞く(お仕事はどんな内容ですか?)
- 直近でストレスを感じたことを聞く(直近でストレスを感じた・面倒だった業務はありますか?)
- 「用意したMVP」について聞く(情報収集はどうしてますか?こんなサービスがあったらいくら払いますか?)
インタビューで注意した点
できるだけ先入観が入らないよう「事実を聞く」質問を心がけました。
たとえば「〇〇を使いたいと思いますか?」ではなく「直近で〇〇に似たサービスを使ったときのことを教えてください」のように実際のことを聞きました。自分の聞きたい答えに誘導しないことを心がけました(けっこう難しい)。
参考: カスタマーマニアになろう
インタビューで何を聞くか?の反省点
5人にインタビューした結果として「課題の抽象的な部分しか聞けなかった」と感じています。
たとえば「顧客リストの作成が大変」とか「リモートでの営業がやりづらい」という課題は出てくるのですが、それぞれの課題を深く掘り下げられませんでした。
私自身がその業務に詳しくないためにうまく聞けなかったというのもありますが、はじめから「顧客リストの作成について聞かせてください」という前提でインタビューをすればその部分をもっと掘り下げられたかもしれません。
課題の仮説を持たずにざっくりとインタビューをしてしまったため、具体的な部分を掘り下げられなかったと反省しています。
インタビューをやってよかったこと
今回のインタビューではやってよかったこともたくさんあります。
未知のことをたくさん知れる
インタビューをするとインターネットで調べるよりもリアルで深い情報が得られます。
特に、専門外な営業職のインタビューだったため、普段は聞けない情報がたくさん得られました。
たとえば「うまくいく営業のやり方」「新規営業での成功パターン」「会話での自然な情報の引き出し方」など、普段のエンジニアとしての仕事からは学べないことをいろいろ教えてもらえました。
人に聞くこと・頼むことのハードルが下がる
これまで知らない人にインタビューをしたことはありませんでした。
インタビューをやる前は「なんでそんなインタビューに答えなきゃいけないの」と思われないかな、と心配していたのですが、いざやってみるとみんな親切にいろんなことを教えてくれました。
これを6人も経験して、人に何かを頼むことのハードルが下がりました。
これはいい経験でした。
インタビュー全体の反省点
反省点もたくさんあります。
どの業務のインタビューをするのかを明確にすべきだった
既に書きましたが、今回は明確な仮説を持たずにざっくりとインタビューをしてしまいました。そのため、課題の具体的な部分を掘り下げられなかったと反省しています。
「顧客リストの作成で苦労すること」とか「リモート営業で大変なこと」といった形で、業務領域を絞ってからインタビューをしたほうが具体的なことが聞けると思います。
インタビューの対象セグメントは限定すべきだった
課題探索インタビューをする場合は、職種だけでなく業種まで限定したほうがよさそうでした。
たとえば「BtoBの顧客リストの作成」という業務を考えたときに、金融業では「企業情報データベースを使ってリストを作成する」のに対して、コンサル業では「対象セグメントの企業に顧客のふりをして電話をかけたり、現場に潜入して調査する」そうです。
同じ業務でも業種によって業務フローが異なりますし、課題になる部分も違ってきます。
はじめは職種と業種の両方で対象セグメントを限定したほうがよさそうでした。
身近な領域の課題を探索すべきだった
自分自身に営業経験がないため、課題らしい発言を聞いても、どの課題が本当に深い課題なのかを判断することが難しいです。仮にひとつの課題を深堀りしようとしても、その課題への共感ができないと自分自身の熱量がなく、うまくヒアリングできません。
相手の話していることがリアルな課題なのか、それとも相手のアイデアに基づく想像上の課題なのかも判断できません。
※この記事で言及しているインタビューの後に、別件でエンジニアへのインタビューを実施したのですがやはり専門領域のほうが課題をヒアリングしやすいです。自分自身が共感できるし、インタビューでの熱量もあり、課題の細かい部分まで聞いて理解できます。
専門外ではインタビュー相手を見つけるのも難しい
専門外の領域ではインタビュー相手を見つけるのにも苦労します。
私はITエンジニアなので、知人を頼るだけでもエンジニアはいくらでも見つかります。
また、エンジニアがいるコミュニティへの入り方(勉強会・もくもく会・セッションなど)も知っていますし飛び込みやすいです。
これが営業職やコンサルとなると、どんな場所にインタビューできる相手がいるのかもわかりません。勉強会やセミナーを見つけても飛び込むには敷居の高さがあります。
結論として、課題探索インタビューは当事者意識を持てる領域で実施したほうよさそうです。
これからどうするか?
今回の課題探索インタビューでは、
- 専門外の領域の課題は見つけにくい・共感しにくい
- インタビュー相手も見つけにくい
- セグメントはもっと絞った方がいい
という反省点が得られました。「営業マンの課題を探す」という方針から「エンジニアの課題を探す」に方針を切り替え、業務領域も限定して課題探索インタビューしていきます。
まとめ
課題探索インタビューをやってみた感想を書きました。反省点がメインでしたが、インタビューでは自分が知らない色々な知見が得られます。
うまくインタビューをすれば「課金してでも使いたい」と思ってもらえるようなサービスの種となる課題を見つけられそうです。
サービスのマネタイズに困っている方や、新規サービスのアイデアに困っている方はぜひ試してみてください。